イーストウッド作品快進撃(毎日新聞夕刊映画欄から転載)

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(この記事は2015年2月27日付毎日新聞夕刊映画欄において掲載されたものです)
【シネマの週末・データで読解:週末興行成績(21、22日)】毎日新聞 2015年02月27日
1. (ー) アメリカン・スナイパー(1週目)
2. (1) テラスハウス クロージング・ドア(2週目)
3. (2) ベイマックス(10週目)
4. (3) ミュータント・タートルズ(3週目)
5. (9) 映画 妖怪ウォッチ 誕生の秘密だニャン!(10週目)
6. (4) チャーリー・モルデカイ 華麗なる名画の秘密(3週目)
7. (6) ANNIE/アニー(5週目)
8.(15) Mr.Children REFLECTION(3週目)
9. (7) ジョーカー・ゲーム(4週目)
10. (ー) きっと、星のせいじゃない。(1週目)

※()の数字は前週順位。興行通信社調べ

『アメリカン・スナイパー』

©2014 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC., WV FILMS IV LLC AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC-U.S., CANADA, BAHAMAS & BERMUDA. ©2014 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED, WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC-ALL OTHER TERRITORIES.

1位はクリント・イーストウッド監督「アメリカン・スナイパー」。イラク戦線で仲間の命を守るため米軍史上最多の160人を射殺した、実在の狙撃兵の苦悩と葛藤の半生を描いている。同監督は近年、1年に1本程度作品を公開しており、日本におけるファンも多い。
しかし1位発進は、2009年公開のアンジェリーナ・ジョリー主演「チェンジリング」(最終興行収入13億円)以来。土日2日間で興収3億3239万6600円をあげる大ヒットスタートを切った。監督のブランド力や映画好きへの訴求力の高さに加えて、ドラマ性とともに、映像や音響の迫力、「ハラハラ感」などの映画らしい娯楽要素によってより広い層に訴えた。
アカデミー賞作品賞にノミネートされ、授賞式前には、映画鑑賞頻度の高いヘビー層に、受賞作「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」や有力候補とされていた「6才のボクが、大人になるまで。」を大きく上回る認知度、意欲度を喚起していた。本作の意欲層は男性が中心だが、過去の同監督作品と比べて年代層はまんべんなく広がっている。
同監督の戦争映画といえば、「硫黄島からの手紙」(06年公開、興収51億円)、「父親たちの星条旗」(同、同17億円)を記憶される方も多いであろう。本作は「父親たち」を超えそうだ。どれだけ多くの観客を劇場に集めるか、注目したい。

(梅津文・GEM Partners代表)=毎月最終金曜日掲載

◆掲載元◆
毎日新聞: シネマの週末・データで読解 「イーストウッド作品快進撃」 (毎日新聞2015年2月27日 東京夕刊)
 

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