「アカデミー賞に選ばれた一本」が動かす力

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本日公開された『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』は今年のアカデミー賞作品賞はじめ4部門を受賞している。
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(C)2014 Twentieth Century Fox

「アカデミー賞」というキーワードはその作品を説明するうえで代表的なキーワードとなるが、この冠は「人々が映画を観たい」と思う意欲と行動にどのような影響があるのだろうか。
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昨年末実査したアンケートにおいて、「映画を見る際に基準・重視するもの」として、29のカテゴリの中から複数選択で回答してもらった。
製作者・上映事業者(出資する俳優/声優等)、作品内容(設定・テーマなど)、話題・評判・その他(海外でヒットしていること、など)といった選択項目のうち、「アカデミー賞の受賞・ノミネート作品」を選んだ人の割合は、過去一年間に一本以上映画を見た人のうち16%。(※複数選択式設問)
この数値を低いと感じる方も、案外高いと感じる人もいるかもしれないが、これをほかの選択項目と比較すると、下記のように位置する。上から順に、割合が高いものとなっている。

設定・テーマ、ジャンル、キャスト等
エンタテイメント性、話題性、原作、続編、ヒットしていること、映像、大作感、監督等
アカデミー賞
芸術性、ネットの口コミ、人の誘いやすさ、音楽等
映画評論家、芸能人の推薦、その他の映画祭の受賞・ノミネート等
制作会社、製作国、配給会社等

アカデミー賞はさまざまな要素の中のちょうど真ん中に位置する。「キャスト」「テーマ」などのようにメインの要素ではないが、挙げる人が少ない要素でもない。
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また、映画を年間に12本以上観る゛ヘビー層”においては、さらに高い割合となる26%が「アカデミー賞」を基準・重視するものとして挙げている。
一年に一本以上映画を観る人が3000~4000万人だとすると、ヘビー層の割合は10%弱で約300~400万人。「アカデミー賞」を観る際の基準とするヘビー層26%は、ざっと80~100万人という計算になる。
かつてある映画配給会社の幹部の方が、「映画好きなら必ず観るべき映画、という位置づけになったとき、基礎票としての興行収入10億が見える」とおっしゃっていたが、ちょうど同じぐらいのパイの大きさである。
なお、「映画好き」や「映画ヘビーユーザー」と言っても好きな映画、観たい映画はそれぞれ。「観るべき」という理性だけでなく、実際の行動に動かす本音の「観たい」というベースがある状態が10億であり、また、「映画好き」でなくても「観たい」度合が高いと10億以上という結果につながるのだろう。
性年代別でみると、「アカデミー賞」はシニアにおいて訴求力が高いようである。女性50、60代、男性60代において高い割合で重視項目として選ばれた。女性60代にいたっては、映画を年間に12本以上観るヘビー層よりも高い割合であった。
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『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』は、先週末土曜日(公開一週間前)時点で12本以上見るヘビー層における意欲率が18.6%。性年代別では男性の意欲度が高く、特に、受賞してから一貫して30~40代男性の意欲度が高い。
公開に向けて「アカデミー賞作品賞受賞」として「映画好きは観るべき」映画となることはもちろん、映画ヘビーユーザーに限らず、そのテーマ・設定から、より広く、多くの人をつかむヒットとなることに期待がかかる。

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