単館・ミニシアター映画の意欲層はヘビー層が多いのだろうか?

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前回の「単館・ミニシアター映画鑑賞世代は?」では、単館・ミニシアター映画が性年代別で見ると幅広く動員している中、女性50代がもっとも多く足を運んでいるということを整理した。では、それ以外の軸、たとえば年間鑑賞本数別に見るとどうだろうか。単館・ミニシアター映画は宣伝費が限られ、情報が幅広く浸透するわけではないので、映画鑑賞に前のめりなヘビー層が多いのだろうか。
そこでデータを見てみると、ミニシアター映画館は映画ヘビー層だけでなく、個々の映画に対し「映画」という枠をはみ出した何かを見出して足を運んでいるお客さんも多いのではないか、という傾向が浮かび上がってきた。
下の図は、横軸が公開時のスクリーン数、縦軸が公開週にその映画の鑑賞意向を持っている人の中におけるヘビー層(年間鑑賞本数12本以上)の割合をとったものである。
劇場公開規模(公開時スクリーン数)と公開時意欲層に占める映画ヘビー層(1)
劇場公開規模(公開時スクリーン数)と公開時意欲層に占める映画ヘビー層(2)

<対象作品>
・2009年3月28日~2014年9月27日の間に公開された作品
・弊社CATSレポートのモニタリング対象(※)作品
 ※100スクリーン以上公開映画
 ※100スクリーン未満かつ一定規模以上の配給会社作品
 ※あるいは公開前に映画祭等で上映・受賞したものなど
・上記のうち、公開規模が判明しているもの

 
「単館・ミニシアター映画」の定義については様々な捉え方があろうが、規模だけに着目し、1~100スクリーンの公開規模のエリアをグレーで色付けした。
 
 
ミニシアター映画の意欲層の中にはライト層も多く含まれている
 
全体的な傾向として、邦画は、実写・アニメともに洋画実写と比べてヘビー層の割合が低い。また、公開規模が小さくなってもヘビー層の割合の傾向にあまり違いがない。洋画アニメはそもそも小規模の作品が少ない。
一方の洋画実写は、公開規模が大きくなるにつれてヘビー層の割合は小さくなっており、また、公開規模が小さくなると、ヘビー層の割合が高い作品が多くなっている。
しかし、洋画実写の100スクリーン未満公開作品でヘビー層の割合が50%以下の作品も多いことに注目したい。邦画と比べると、小規模作品鑑賞意向者のヘビー層の割合はバラバラで、高いものも低いものも存在している。
12本以上みるヘビー層は映画関係の情報源に触れる機会も多く、また、能動的に情報収集をする人も多いだろう。一方のライト層は、映画というフィルターに中立な人が多いと考えられる。その中で、ミニシアター映画の意欲層の中にライト層も多く含まれているのである。
 
 
自分の好きなテーマ・コンテンツに触れることを動機に
 
小規模公開映画は強いテーマ性を持った作品も多く、「映画を見に行く」というより「自分の好きなテーマ・コンテンツ」を映画館に見に行くという行動であろう。たとえば邦画アニメは映画ヘビー層の割合がそもそも低く、好きなアニメシリーズの劇場版を見に行っている様子がうかがえる。洋画実写でも、最近ヒットした『アバウト・タイム ~愛おしい時間について~』もヘビー層の割合は54%程度。最近は頻度が減っていた人が『ラブ・アクチュアリー』が懐かしく足を運んだ人が多かったのではないか。また、音楽映画にもヘビー層の割合が低い作品が多くみられる(『パガニーニ 愛と狂気のヴァイオリニスト』『カルテット!人生のオペラハウス』『アルゲリッチ 私こそ、音楽!』など)。
単館・ミニシアター映画を含めた小規模公開映画が「映画」というフィルターだけでなく、お客さん自身が強く関心を持つ「自分事」というフィルターでも訴求している作品も多いことがうかがえる。
 

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