スター・トレック イントゥ・ダークネス:認知度よりも「熱」で前作を大きく超える見込み

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(執筆:梅津文)

◆夏休みナンバーワン実写洋画となるか◆
先週のジャパンプレミアや来日記者会見などの露出により、8月17日土曜日時点(-1W)の数値は前週比で認知、意欲とも大きく伸びた。過去類似作品と比べると、おおむね公開週末土日二日間で2.8~4.6億とペースも上がっている。先週末の先行上映も各劇場で売り切れも出ていたとの発表もあるが、ちょうど昨年同時期に公開され先行上映を実施した「プロメテウス」(2012年8月24日公開 最終18.1億、先行除く公開週末土日興行収入3.0億)の-1W時点数値に近い。
今年の夏休みの実写洋画の現状ナンバーワン、ツーとなっている「ワイルド・スピード EURO MISSION」(公開週土日4.4億、最終20億~見込み/公開中)、「ワールド・ウォーZ」(公開週末土日3.3億、公開中)。本作は公開前後の追加露出によりペースアップをはかり、どう競り合うか注目される。もちろん、前作(スター・トレック 公開週末土日1.5億、最終6億)を大きく越えることは間違いない。
◆洋画大作シリーズものの前作越えの鉄則
続編は前作の8割がけが目安ともいわれる中、「スター・トレック イントゥ・ダークネス」のように前作を上回る興行成績となった洋画大作の作品が最近多くみられる。
「アイアンマン」シリーズは2010年の「2」が公開週末土日2.7億 最終12.0億だったのに対して、今年の「3」はそれぞれ4.1億 最終25.7億となり、「ワイルド・スピード」シリーズは2009年の「MAX」が2.1億 最終9.5億、2011年の「MEGA MAX」が2.2億、14.4億、2013年の「EURO MISSION」が4.4億、20億~/公開中と記録更新中。「007」シリーズも2009年の「慰めの報酬」が最終興行収入19億に対して、今年の「スカイフォール」は27.3億である。「96時間」シリーズ(2009年「96時間」、2013年「リベンジ」)や「G.Iジョー」シリーズ(2009年「G.I.ジョー」、2013年「バック2リベンジ」)も前作とほぼ同程度をキープ。こういう嬉しい結果になった要因としては、前作の満足度の高さ、ホームエンタテイメントマーケティングによるファン層の形成(「アイアンマン」はいうまでもなく「アベンジャーズ」効果もある)のほかに公開規模・時期、予算のかけ方などさまざまであろう。
一方、トラッキングデータ上でわかることとして、このような事例に共通しているのは、前作比での認知の高さよりも、その中の「意欲/認知率」の高さ(認知している人の中の意欲のある人の割合)である。認知度はむしろ前作よりも下がっている場合が見られる。たとえば、「ワイルド・スピード」のEURO MISSIONの公開時の認知度はシリーズ3作品の中で一番低い。「アイアンマン」、「G.I.ジョー」、「96時間」ともに、前作よりも公開時認知度が低い。しかしながら、12週前時点から公開に至るまで意欲/認知度が高めにキープされており、認知度が数か月前あるいは公開時点において前作と同程度あるいは下回っていても、意欲度は前作と比べて同程度か上回っている状態で公開を迎えている。ここに、前作を見たシリーズファンの期待度が高くさらにそれを拡大・キープする形で宣伝が本格化し公開を迎えていることが伺えるのである。認知度というパイの広がりよりも、パイが小さくなっても「熱度」ともいうべき期待度の高さである。
◆スター・トレックも認知よりも「熱」度
「スター・トレック イントゥ・ダークネス」もその例に漏れず、12週前時点から意欲/認知率が高めであった。前作は8週前から公開週まで意欲/認知率が6%弱で推移したのに対して、本作は概ね9%で推移している。認知度は前作が公開週60%、本作は-1W時点で40%と低めであるが高い意欲/認知率により前作の公開週意欲率4.4%とほぼ変わらない意欲率4.0%となっている。早い段階からの劇場での宣伝展開や悪役を演じた俳優のベネディクト・カンバーバッチの来日を含めて、広く洋画ファンの期待度を高めた結果と言える。
今後もヒットシリーズの続編はたくさん公開される。認知は直前の宣伝費で伸ばせるとしても、そもそもの「熱」をどう早く高めてキープし、最後の認知拡大とともに鑑賞意欲を全体的に高められるかが勝負を分けている。公開からまだ数ヶ月前時点で前作と比べてどうなりそうかを判断する指標の一つとして、意欲/認知度が参考になると考える。

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