弊社では、映画ビジネスにかかわるプロフェッショナルの方々に映画市場の現状と未来を考える素材を提供する目的で、昨年と同様、年末に実施した調査をもとに「GEM映画白書2015」を準備している。
今年は昨年と同じく市場の構造の基本整理に加えて、そもそも人々にとって「映画館で映画を見るということはどういうことか」について迫る内容を目指した。
映画を観るとき人は、なぜ、映画に何を求めて、どのような時に、誰と、どういう場所で、どういうプロセスを経て、どのような映画を観るのか。観た後にどのような行動をとるのか。
また、2014年に公開された主要作品は、どのような嗜好や行動特性を持つ人が観たのか。
性年代の属性を超えて、映画を観ることをどういうことととらえている人が観たのか。
このコラムでは現在とりまとめ中のレポートから分析をピックアップして取り上げたい。
まずは例として、個々の作品を見た人は<普段からどのような映画の見方をしている人が多かったのか、あるいは、少なかったのか>を『アナと雪の女王』を映画館で観た人を例に整理した。
それぞれの項目につき、「能動的」な考え方・行動を左に、「受動的」なものを右に配置した。
グラフの数値は、「アナ雪」を観た人の中でのそれぞれの項目に該当すると答える割合と、調査作品(注1)の平均との差分である。
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受動的な行動特性がある人が多かった「アナ雪」鑑賞者
こうしてみると「アナ雪」を観た人は、「受動的」(右側)な人の割合が映画鑑賞者人口より多めで、逆に「能動的」な人の割合が少なめだったことがわかる。
そもそも映画館に来て映画を観ている人は一般的には「能動的」な行動様式を普段からとっている人の割合が高い。しかし映画を超えた社会現象となった本作は映画について「受動的」な人を他作品と比べてより多く取り込んでいたことがわかる。
作品ごとデータを整理すると、どういう嗜好・行動特性を持った人が多かったかは異なり、それぞれの作品の特性や浸透の仕方、興行の展開が異なったことが推察される。
(次回以降のコラムに続きます)
(注1)調査対象作品の抽出条件は、2013年12月~2014年12月公開作品のうち、最終興収4.5億円以上、または初週土日興収1.3億円以上の条件に当てはまる99作品(例外として『チョコレートドーナツ』を含む)