既定の枠超えた「怪盗グルー」とヘビー層に訴求「エリジウム」

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(執筆:梅津文)

今週末公開映画の中から「怪盗グルーのミニオン危機一発」「エリジウム」をとりあげる。
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◆既定の枠超えた「怪盗グルーのミニオン危機一発」
過去作品のマーケティングデータと興行結果を使った計算モデルによるシミュレーションで、重要なのはどういったジャンルと位置付けるかということである。
先週末(公開一週前)時点の「怪盗グルーのミニオン危機一発」の認知・意欲等の数値を、「洋画アニメ/400スクリーン以上で公開/親子層意欲シェアが30%以上/3D字幕吹替あり」といった通常のアニメ作品同様の計算式に当てはめると、0.5~1.0億円となる。しかし、先週末に行われた先行公開時点ですでに3億円を超えた。
一方、この作品を「洋画アニメ/キッズ向け」「ピクサー」「ディズニー」及び「怪盗グルー」のモデル式に当てはめると、2.8~3.2億円ペースである。似て非なるこの二つの式に同じ値を当てはめたときに、後者が大きな計算結果になるのは、その作品群の持つキッズ層への訴求度、公開日までの宣伝展開の違い、そして一番にブランド力と考えられる。
先行公開からヒット・スタートした事例が少ないため、「公開週末土日」の数値を考えることは難しいが、先行公開時の勢いから「怪盗グルーのミニオン危機一発」は「ピクサー」「ディズニー」作品と同様のブランド力を持ったと考えることができる。ファミリー層に訴求できる新たな洋画アニメブランドの登場かもしれない。
ちなみに「大ヒット」というのは多くの場合、「想定以上」の結果となったことをいう。「想定」とは、過去のケースとの比較によって、その作品をどう位置付け、どのように推移するかを測ること。それがプラスの方向に裏切られるのは、作品のポテンシャルを理解切れていなかったということなのかもしれないが、素晴らしいクリエイションには、ときどき神が人知を超えたいたずらをする。非論理的かもしれないが、時折そう思うことがある。
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◆コア度が引き立つ「エリジウム」
「エリジウム」は先週末(公開一週前時点)時点では1.6~1.9億円ペース。特徴的なのは、規模の割に認知度が低いのだが、意欲度(意欲/認知度)は高く、公開12週前から1週前までの100スクリーン以上公開作品の中で最も高い。特に際立つのは、1年間に12本以上映画館で映画を見るヘビー層の意欲/認知度で、35%近い。ヘビー層においては相対的に認知度も高め。映画館にとっての「上顧客」をしっかり捕まえた安定した興行結果が見込まれる。

Matt Damon;Sharlto Copley

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