夏の大作も出そろい、お盆は記録的な興行成績となったようである。
以下の【図1】は、夏興行に向けて公開された作品の最終興行収入(6月最終週から8月3週目ないし4週目までの9週間の間に公開された作品/以下より「夏興行作品」)の合計を積み上げたものである(2015年は最終見込み推計値を用いた)。
まだ力強い動員が続いている作品も多くどこまで伸びるか未知数だが、現時点の興行収入状況からこの夏の公開作の最終見込みを推計して積み上げると、今年は530億を超え、『トイ・ストーリー3』(108億)、『借りぐらしのアリエッティ』(93億)、『踊る大捜査線 THE MOVIE 3 ヤツらを解放せよ!』(73億)など100億級の作品が続出した2010年を上回る結果となりそう。
この図を見ても分かるとおり、記録的興行結果のドライバーは洋画、特に実写がドライバーである。
作品としては、100億級となりそうな『ジュラシック・ワールド』以外にも、『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』、『ミニオンズ』、『インサイド・ヘッド』が40~60億級の動員となっていることが大きい。邦画は、『バケモノの子』『映画 HERO』が牽引している。
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前回コラムで、例年の夏興行作品と比べた今年の特徴として、洋画が「鑑賞頻度の低い層での意欲が高くなっているといえそう」と書いたが、『ジュラシック・ワールド』『ミッション・インポッシブル/ローグ・ネーション』のデータを-1Wから1Wのものに更新しても、やはり同じ傾向となった。
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このように良い興行結果となっているが、宣伝費に対してはどうか。まずは予算の大きな割合を占めるテレビCMに対して興行結果がどうだったかを整理した。
以下の【図3】は、邦画・洋画につき、夏興行作品の公開12週前から公開週までのテレビCM露出量の推計値(弊社にて推計)を横軸に、縦軸に最終興行収入をプロットしたものである。2015年の作品は赤い点である。
左上にある作品は、テレビCM投下量に対して興行収入が多かったものであるが、2015年の作品、特に洋画作品がこのゾーンに多く出ている。
広告宣伝費に占めるウエブ・ソーシャルメディアの予算を増加しているケースも最近増えているので、全体予算に対して効率がよくなっているかどうかはわからないが、少なくともテレビCM量に比して大きな興行成績となっている。
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今年は、特に洋画が、動員の広がりという意味でも宣伝効率という意味でも、よい夏となったといえるのではないか。