夏の映画興行の「連続猛暑度」

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猛暑が続いているが、今年の夏興行の「暑さ」もかなりのもの、というのが配給・興行関係者の実感であろう。
前回のコラムでとりあげたとおり今年の特徴は、100億級のメガヒット作品登場の可能性は未知数であるものの、近年の夏と比べると30~80億級の大ヒット作品が突出して多くなりそうなこと。
夏興行作品(6月最終週末含めて8月第2週目ないし第3週目まで週末/9週間の間に公開された作品)のうち、80億以上と30~80億レンジだった作品を整理すると(詳細こちら)、2010年以降80億越えの作品が0~2作品、30~80億作品は1~3作品だが、今年は8~11作品となる見込みである。
今年の夏は、突き抜けた酷暑が二、三日続くのではなく「連続猛暑日」記録を更新しているが、ちょうど同じように、映画興行も大ヒットが毎週末生まれている。
100億級の作品が生まれるとき、年間鑑賞本数が1~2本のライト層の意欲が高いということが条件の一つである。このセグメントは全体に占めるパイが大きいからである。
では、30~80億級の作品の連打が続いている今年は、鑑賞意欲の傾向に違いがあるだろうか
各年のこの時期の公開作品(300スクリーン以上)の公開週(1W)の鑑賞意欲度を、回答者の年間鑑賞本数別に整理した。
邦画、洋画と分けて集計し、横軸はどの年か、縦軸目盛りは各作品の意欲度の高さを表している。
四角印は、各作品の鑑賞本数別意欲度を示しており、横棒とその数値はそれぞれの年ごとの平均値である。
赤い四角は、今週末公開作品で、こちらは公開1週前(-1W)にあたる、先週末実査時点の数値である(注1)。
【各年の夏興行作品の年間鑑賞本数別意欲度】2015/8/7 GEM Partners

【各年の夏興行作品の年間鑑賞本数別意欲度】

各作品の意欲度/今週末公開作品に対する意欲度

こうしてみると、今年は洋画の意欲度がどのセグメントでも高くなっていて、特に、年間鑑賞本数が3~5本、6~11本のミドル層・ミドルヘビー層において、例年と比べて意欲度が高いことがわかる。
特に洋画の上位に来ているのは赤い四角、つまり今週公開の作品(『ジュラシック・ワールド』『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』)の公開1週前の値である。これから公開に向けてさらに高くなることが予想され、結果としてはこの傾向はますます強まると考えられる。
◆ ◆ ◆
年間一本以上映画館で映画を観る「映画参加者人口」の年間鑑賞本数別の構成比はおおむね1~2本は50%前後、3~5本は30%程度、6~11本が10%程度、12本以上は5~10%程度である。1~2本の人が圧倒的に大きなパイを占めるが、3~5本、6~11本のミドル層も40%程度のシェアを占める。
書き入れ時はライト層も来場するので「ファーストチョイス」になるかがカギとなるが、ミドル層・ミドルヘビー層を中心に高い意欲を喚起した作品が多数ヒットしている様子がうかがえる。このようにパイが大きいミドル層・ミドルヘビー層の意欲がこれだけ高ければ、ファーストチョイスが高くなくても動員数がドライブされる作品も多くなっているであろう。
そして、こういったミドル層が劇場に多数来ているということは、今後秋以降の作品の予告編を見ているということであり、秋以降の興行にもプラスの効果を生む資産となるであろう。なお、6月末の週末以降の作品のみを集計し、経年で比較しているのでここには含まれないが、6月中旬に公開された『ラブライブ!The School Idol Movie』『マッドマックス 怒りのデス・ロード』もロングランヒット中である。
一日も早く過ごしやすい秋になってほしいものだが、一方で、興行の「残暑」が続き、今後の興行の下支えとなることに期待したい。

(注1)▼300スクリーン以上予定の今週末公開作品
邦画:『BORUTO(ボルト) -NARUTO(ナルト) THE MOVIE-』 『日本のいちばん長い日』『劇場版 仮面ライダードライブ サプライズ・フューチャー /手裏剣戦隊ニンニンジャー THE MOVIE 恐竜殿さま アッパレ忍法帖!』
洋画:『ジュラシック・ワールド』『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』)

あわせてご覧ください

・最終興行収入30億以上の夏興行作品リスト(2015.8.7)

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