ジブリ最新作「風立ちぬ」ポテンシャルと異例の4分間劇場予告編の効果

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本作は、2年ぶりのジブリ作品、5年ぶりの宮崎駿監督作品である。
 
公開1週間前のポテンシャルは『コクリコ坂から』『借りぐらしのアリエッティ』の間
本作を『コクリコ坂から』(公開週末土日3.9億、最終44.6億、2011年公開)と『借りぐらしのアリエッティ』(公開週末土日9.0億、最終92.5億、2010年公開)を比べると、本作の意欲率はおおむね中間の値で推移している。
ジブリ作品はほかの作品と比較が難しいが、2009年以降のジブリ作品のほかに、ジブリ同様に製作会社ブランドが強いピクサー作品を比べると、公開週土日二日間で6~7億円の興行収入ペースである。
ジブリ・ピクサーともに「大人も子供も楽しめる」オールターゲット映画というイメージもあるが、本作はその中では「大人」よりの作品となっている。
意欲層に占める「親子層」(15歳未満の子供と普段映画に行くと答える人)と「大人層」(「親子層」以外の15歳から69歳男女)の割合は、おおむね20:80。これは『コクリコ坂から』と同程度である。
大ヒット公開中の『モンスターズ・ユニバーシティ』は44:56、『借りぐらしのアリエッティ』も26:74なので本作は大人よりといえる。
数週間前と比べると過去作品よりも数値は力強く伸びていて、興行収入ポテンシャルは上昇傾向にある。最後の宣伝の仕掛けでさらに力強く伸びていくこと、あるいは家族連れにも広がればさらに動員に弾みがつきそうである。
 
異例の4分間劇場予告編の効果は如何に?
本作に関して異例な宣伝の仕掛けの一つとして挙げられるものに、4分間にわたる劇場予告編の上映がある。
弊社では劇場での「予告編到達率」を、毎週実施のアンケートで過去1週間に劇場で映画を見た人に対して、「どの作品を見た時に、どの予告編を見たのか」を聴取する形でモニタリングし、意欲・認知との推移とともに分析している。
(分母は「映画鑑賞者人口(過去一年間に映画館で映画を1本以上見た人)」)
「予告編到達率」の推移をみると、本作は公開5週前まで1%前後で推移し、4週前時点で2%にぐっと上がり、2週前、1週前(先週土曜日7月13日アンケート実査)は4.8%、4.9%と高い数値をキープ。映画鑑賞者人口の約5%ということは一週間に150万人前後が劇場で予告編を見たと推計できる。3年前より本データをモニタリングしているが、公開1週前時点での数値としては、332作品中5位と非常に高めである。(一位は『るろうに剣心』の5.5%)
なお、この「4分間予告編」は6月8日から上映開始で、当初はエンドロール終了後のタイミングに上映されていた。6月13日にはTOHOシネマズから上映タイミングが本編上映前に移動するという発表があった。この影響は予告編到達率が伸びた5週前(6月15日)から4週前(6月22日)の数値の変化に現れる。(5週前時点の数値は、6月7日から14日の間に、4週前時点の数値は6月15日から6月22日の間にそれぞれ劇場で映画を見た人に聴取する)
劇場での予告編上映回数もその間に増えたと想定されるが、エンドロール終了後の予告編上映よりも本編前の上映の方が効果的だったから先述のとおり4週前から5週前時点にかけて数字がさらに伸びたという可能性もある。
現在、劇場は『モンスターズ・ユニバーシティ』などのヒットにより多くの人でにぎわっており、劇場で予告編を見ている人の数も多い。映画マーケティングの観点からは興行収入結果だけでなく、どれだけ劇場予告編を見せこめるのかも注目される。

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