「洋画」と「邦画」の垣根はなにか?


「洋画」と「邦画」。外国映画と日本映画という言い方もされるが、「邦高洋低」表現など、この区別で総興行収入が語られることは多い。
言わずもがなではあるが、大まかに言って「洋画」と「邦画」では主要な事業者もそのビジネスモデルも異なり、ほかにも一般的に挙げられる違いはいくらでもありそう。

しかし映画鑑賞者側にとって、「洋画」あるいは「邦画」ということはどのような意味を持つのか。この視点に立ってデータを整理した。

まずは、邦画、洋画という区別の中で、映画鑑賞者の鑑賞行動・態度はどのようなものか、データを用いて考えた。

 
洋画 VS 邦画:「中立」が5割近い

以下の【図1】は、GEM Partnersが提供している定点観測レポート(CATS)のための、週次のインターネットアンケートの結果を集計したものである。
実施日は、2014年2月15日、対象は全国に住む15歳から69歳男女のうち過去一年間に一本以上映画館で映画を観たと答えたサンプル数3,200。

回答結果を以下のとおり分類し、性年代別に集計した。

青:洋画をよく観る方である(邦画をよく観る方ではない)
赤:邦画をよく観る方である(洋画をよく観る方ではない)
灰:洋画・邦画ともよく観る方である
白:洋画・邦画ともよく観る方ではない

映画鑑賞に関する調査結果

こうしてみるとまず、「洋画・邦画とも観ない」あるいは「洋画・邦画とも観る」という人でおしなべて、どのセグメントでも半数存在する。もちろん、邦画洋画の内訳は性年代別に違い(若い女性は「邦画をよく観る」と答えるなど)はあるが、観ないあるいは観るのであれば両方観るという人が半数を占めるのである。

 
『アナと雪の女王』のヒット後の変化は?

大ヒットした『アナと雪の女王』はウォルト・ディズニーというアメリカの企業が製作した「洋画」である。「アナ雪」のヒットの後、鑑賞者の認識・行動は変わったのか?

以下の図は「アナ雪」がヒットした後の、同じ設問に対する回答データの集計結果(2014年7月19日実査、対象は全国に住む15歳から69歳男女のうち過去一年間に一本以上映画館で映画を観たと答えたサンプル数3214)と先述の結果を比較したものである。
全体と男女別は【図2】、性年代別は【図3】である。

映画鑑賞に関する調査結果

映画鑑賞に関する調査結果

こうしてみると、「アナ雪」のメイン顧客層である女性層でも、洋画・邦画どちらをよく観る方なのか、あるいはそうではないのかという割合の傾向に大きな変化はない。「洋画・邦画とも観るほうではない」と答える割合が女性の多くの年代で増えていて、「アニメ」を観るという認識の人が増えている可能性はある。

 
そもそも「アナ雪」は映画鑑賞者にとって「洋画」だったのか?

「アナ雪」の鑑賞者の9割は吹替え版で鑑賞したという。

それも合わせて考えると映画鑑賞者にとって、特に若い世代にとって「アナ雪は洋画」という認識は非常に薄かったのではないか。

社会現象となった「アナ雪」は多くのライトユーザーや1年以上ぶりに映画館に来る人を劇場に呼び込んだが、そのことがもたらす恩恵は「洋画」の枠は超えていたことが先のデータからも伺える。

 
結局映画鑑賞者が重視するものは?

以下の図は、一年に一本以上映画館で映画を見る人に対するインターネットアンケートを集計した結果である。
(2013年12月27日実査、対象は全国に住む15歳から69歳男女のうち過去一年間に一本以上映画館で映画を観たと答えたサンプル数4,507)

映画鑑賞に関する調査結果

こうしてみると、映画鑑賞の際に「最も重視するもの」として最も高い割合で挙げられるのは「設定・テーマに興味がある」ことである。「洋画」「邦画」とカテゴリ分けされるものも、それぞれの作品の「設定・テーマ」は様々。みんなが知っている日本人俳優が出ていて話題になっている映画なのか、あるいは、知らない外国人俳優が出ている外国語の映画なのかよりも、自分にとっても体験したい物語が描かれているのかどうかというところに尽きるのではないか。

 
昨今の様々なデータを振り返って

私も「洋画が好きですか?邦画が好きですか?」と聞かれれば、「洋画の方が好きです」と答えるが、実は『ロード・オブ・ザ・リング』も『ハリー・ポッター』も見ていない(それで映画が好きだなんて言うな、とお叱りを受けそうだが)。私が最近見た映画でもっとも好きな「洋画」は、『サード・パーソン』と『複製された男』である。「洋画派ですか?」「邦画派ですか?」という会話では話がかみ合わず、細かく説明する必要があることも多い。

「アナ雪は9割吹き替えで鑑賞」という事実とともに上記のことがきっかけとなって、「『洋画』って何なんだろう?そもそも映画のカテゴリはなぜ二択なのか?」と考え始めた。

結局のところ、ある配給会社の幹部の方もおっしゃっていたように、つまるところ「いかに多くの人、鑑賞者にとって“ジブンゴト”になっているか」どうかがカギなのだろうと感じた。

「洋画」「邦画」問わず、その映画が「洋画」と呼ばれていようと「邦画」と呼ばれていようと、そのことに尽きるのではないかと今回の考察を経て考えた。

関連記事