邦画と洋画の認知度低下が意味するもの(毎日新聞夕刊映画欄から転載)

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(本コラムは毎日新聞夕刊映画欄「データで読解」に執筆したものの転載です。2013年2月28日掲載)
週末興行成績 (2月22日、23日)
1位 土竜の唄潜入捜査官 REIJI(2週目) ◆ 2位 永遠の0(10週目) ◆ 3位 劇場版 仮面ティーチヤー(1週目) ◆ 4位 抱きしめたい 一真実の物語-(4週目) ◆ 5位 キック・アス ジャスティス・フォーエバー(1週目) ◆ 6位 エージェント:ライアン(2週目) ◆ 7位 小さいおうち(5週目) ◆ 8位 劇場版 TIGER&BUNNY -The Rising-(3週目) ◆ 9位 ラッシュ/プライドと友情(3週目) ◆ 10位 大統領の執事の涙(2週目) ◆ (興行通信社調べ)
認知度は低めでも
 当欄の読者(※毎日新聞の読者)の中にも、「ランキング上位にも知らない作品が増えてきた」とお感じの方が、少なくないのではないか。というのも、個々の作品の認知度が年々下がっているのだ。特に、洋画にその傾向が顕著である。
 かつては公開時に認知度が80%もある、つまり「ほとんどの人が知っている」という作品が年に何本もあった。ここ数年でそういった作品は減り、平均認知度も下がっている。といって、それと比例して興行収入が減っているわけではなく、低めの認知度ながら高稼働する作品も増えてきた。
 好スタートを切った『仮面ティーチャー』や、洋画最上位の『キック・アス/ジャスティス・フォーエバー』も認知度は30%台しかない。つまり、知っているのは3人に1人程度ということになる。その他も20~40%台だ。
 興収80億円が目前の『永遠の0』は、公開時の認知度が現在ランキング入りしている作品の中で最も高かったが、それでも67%。3人に1人は知らなかったのである。
「自分は知らないけど隣の誰かが見たい作品が案外ヒットしている」ケースが増えている。「みんなが話題にしている作品を見に行く」よりも、自分が好きなテーマ、ジャンル、俳優の映画を選んで見る人の割合が増えているのではないかと想像する。
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補足
 本サイト2014年2月22日付コラム洋画の認知率と興行収入の関係に変化において、2010年から2013年にかけて、洋画(ハリウッドメジャー配給会社による100スクリーン以上のもの)の公開時の認知度が年々下がってきていることにふれた。
 邦画(100スクリーン以上公開作品)も、洋画ほどではないが、公開週認知度が下がってきている。ちなみに、2010年時点では邦画と洋画にあまり差はなく、洋画のほうが大きく下がってきていて、差が大きくなっている。
 なお、邦画も洋画も認知度は年々下がってきているがそれに応じて興行収入が下がってきているわけではない。邦画も洋画も、認知した瞬間以降の顧客行動の導線、つまり「鑑賞意欲」喚起のトリガーと実際にチケットを買うまでの導線に構造変化が起こっていると考えられる。

『永遠の0』 (C)2013「永遠の0」製作委員会

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