先週のコラムでは、大ヒットした『暗殺教室』の鑑賞者・意欲層の中心だった女性10代(15歳~16歳)につき、GEM映画白書2015のデータを使って分析した。
今週は一つ上の年代、女性20代の映画鑑賞の行動特性につき、女性10代と比較しながらその掘り下げる。先週同様、GEM映画白書2015のデータを使用した。
デートで行く映画に行く割合が高まる
まず、映画を「誰と観に行くか」については、女性10代が「友人と二人」と答える割合が圧倒的に高いのに対し、20代になると数値は大きく下がる。それでも他の性年代よりも高いが、女性10代の半分程度の割合である。
一方で高くなるのは、「恋人・気になる異性と」「夫婦で」で映画を観るという割合で、ライフステージの変化が反映されている。
ちなみに男性20代でも同様に10代と比べて恋人・夫婦で行くと答える人の割合は高くなるが、それよりも大きく高まるのは「一人で」観ると答える割合である。
映画に求めるものは「日常生活からの解放」へと変化
映画館で映画を観ることに求めるものは、女性10代は「周囲との共通の話題、付き合い」であったが、女性20代ではこう答える人の割合は低くなる。
代わりに高くなるのは、「恋人・夫婦間のコミュニケーション」「日常生活からの解放」と答える割合である。
前者については先ほどの同伴者に関する質問を反映しており、「友達」を中心とした周囲ではなく、恋人・夫婦のつながりの手段への位置づけの変化がある。
後者については独立して職場・家庭に入る割合が高いことも反映されていると考えられる。
映画選びには、より慎重になる
映画鑑賞におけるこだわりとしては、映画は映画館で観たい、観たい映画はなるべく早く見たいという割合が女性10代より低くなる。
一方で、増えるのは、映画館で映画を観る前に情報収集をする、割引デーを積極利用するという割合である。学生割引がなくなり、一回の映画鑑賞料金が高まって値段や見た後の満足度にセンティブになっていると考えられる。女性10代と比べて勢いで行く度合が弱まることが伺える。
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上記で見たとおり、女性20代は「デートで映画を観る」割合が高まる。映画選びに慎重になり勢いで観ることが少なくなり、また、「日常生活からの解放」を求める割合が高まる。
このような女性20代の意欲を喚起し、大ヒットした最近の作品として、『テラスハウス クロージング・ドア』がある。本作の鑑賞意欲者の中に女性20代が占める割合は非常に高かった。
(C)2015 フジテレビジョン イースト・エンタテインメント
本作は、2月14日のバレンタインデー公開で、男性20代も多かった。
「バレンタインデー」に公開というイベント感は、デートで映画を観るうえで非常に訴求度の高いセッティング。また、浸透している人気番組の続きであり、わかりやすい設定と、継続して「出演」しているキャラクターがいる。「事前情報収集」はほぼ必要ない。
ここは議論が分かれるところかもしれないが、「リアリティショー」として、現実では考えにくい設定の中で進むストーリーは、女性20代が求める「非日常的な感覚」をもたらしたのではないか。
これらのことが、10代のときより少し慎重になった女性20代の背中を押し、劇場に向かわせることの後押しとなったのではないか。
『テラスハウス クロージング・ドア』大ヒットの要因の一つとして、女性20代の鑑賞特性を踏まえた作品・宣伝の訴求もあったと考える。
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