3月最後の週末となる3月30日、31日のランキングは、春休みの時期に公開された洋画・邦画大作アニメが1位から3位を占めた。3月9日に公開され、シリーズ最高の興行収入とも言われている「ドラえもん」が3位。続編ものではない洋画アニメとしては過去3年間で最高のオープニング成績を記録した「シュガー・ラッシュ」が2位。両作品以上の勢いで先週末公開された「ドラゴン・ボールZ 神と神」が公開週末土日興収約7億で1位となった。
どの作品も「大ヒット」と言われており、つまり言い換えれば「過去を超える」あるいは業界の方々にとって「想定以上」の結果となったといえる。本コラムでは、マーケティングデータからみると、それぞれの作品は「過去」あるいは「通常」とどう異なっているのか、「想定」を超えた要因は何かについて分析していく。
◆「映画ドラえもん のび太のひみつ道具博物館」過去シリーズと比べて「親」と「大人」の意欲が高め
「ドラえもん」はじめシリーズものの邦画アニメは多くの場合、「子供主導」である。日ごろからテレビ放送はじめ多数の媒体で子供と接点がある「生活密着型コンテンツ」とも言われ、子供から親にみたい!と能動的に働きかけて市場内の意欲が形成されていく。毎年恒例となっている「プリキュア」「コナン」「仮面ライダー」などのシリーズ映画は、家族の「年中行事」となっている。
しかし、「子供」の市場は小さく、限定的である。特に未就学児や小学生・中学生が、60代まで広がる映画人口の中に占める割合は限定的で、しかも「大人」と比べるとライトユーザー層が多い。したがって、シリーズものの映画で前作を超えるヒットを作ることを考えるとき、この必ず来てくれる「子供」層の意欲を喚起しつつ、それ以外の層に広げていくというのが手段の一つとなる。2013年のドラえもんでもこの広がりがデータから見られる。
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まず、公開時のマーケティングデータをみてみると、まず本作は、過去の3作品と比べて認知率は低いが意欲率は高い。
以下は横軸が認知率、縦軸が認知している人の中の意欲を示す「意欲/認知率」で、斜めに走る線が意欲率の等高線である。右上に行けば行くほど意欲が高い事を示すのだが、2013年版ドラえもんがもっとも意欲率が高い位置にある。
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では、どういった層の意欲が高かったから、過去より意欲率が高かったのか?
本リサーチの対象は、15歳から69歳の男女である。このサンプルを「普段子供と映画を観に行く」と答えた親、つまり「親子」鑑賞層と、そうではない「大人層」と分けてみたのが以下の図である。意欲率はいずれもシリーズ過去作品より高めの数値である。2013年公開のドラえもん、「映画ドラえもん のび太のひみつ道具博物館」は、普段は「受動的」に映画館に行っていた親が、「能動的」に意欲を持っていたこと、また、普段子供と映画を観に行かない「大人層」もうまく取り込んだことがうかがえる。
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2013年ドラえもん公開時のマーケティングデータを性年代別に集計したのが以下の図である。過去シリーズと比べて多くの性年代でシリーズ過去作品よりも高めであるが、以下の図から特に男女とも30代における意欲率が高かったことがわかる。子供がいる人、いない人問わず「ひみつ道具箱」の訴求力が特に30代の人の意欲を喚起したと考えられる。
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このように、今回の「映画ドラえもん のび太のひみつ道具博物館」は、「ひみつ道具箱」を押し出した内容で、「親子」、あるいは子供と映画を観に行かないが「ドラえもん」を見ていた15歳以上から30代にかけての「大人」にも訴求している。このことが「大人」含めた市場全体において高い意欲率につながり、大ヒットになったと考えられる。
(執筆:梅津)
※「ドラゴンボールZ 神と神」は後日更新予定。
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