2012年回顧 (5)facebookでのいいね数ランキング

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文責:梅津)
マーケティング効果を測る指標は既にたくさんあって、また次々生まれてきています。映画マーケティングにかかわる方々も、データの種類や量については、足りなくて困るというより、ありすぎて何を見て、どう判断したらいいのか、複雑であることが悩みなのではないかと想像します。
新しい指標としてよく話題になったのは昨年はツイッター関連、今年はfacebook関連でした。
というわけで、2012年公開(2011年11月末から2012年11月末)映画facebook内に作られる公式のfacebook pageに「いいね!」がついた数を集計しました。(集計日:2012年12月10日、11日)
【facebook pageいいね数ランキング】

ランク タイトル 配給 公開日 いいね数
1 映画ドラえもん のび太と奇跡の島
~アニマル アドベンチャー~(※)
東宝 2012/3/3 101,121
2 ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q カラー/ティ・ジョイ 2012/11/17 44,217
3 悪の教典 東宝 2012/11/10 30,681
4 踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望 東宝 2012/9/7 23,625
5 SPEC~天~(※) 東宝 2012/4/7 18,778
6 スノーホワイト 東宝東和 2012/6/15 16,936
7 ボーン・レガシー 東宝東和 2012/9/28 16,372
8 しあわせのパン アスミック・エース 2012/1/28 16,202
9 黄金を抱いて翔べ 松竹 2012/11/3 15,783
10 アメイジング・スパイダーマン ソニーピクチャーズ 2012/6/30 14,451
11 メン・イン・ブラック3 東宝東和 2012/5/25 14,349
12 ダークナイト ライジング ワーナー 2012/7/28 13,374
13 るろうに剣心 ワーナー 2012/8/25 11,857
14 アベンジャーズ ディズニー 2012/8/17 11,264
15 宇宙兄弟 東宝 2012/5/5 11,041
16 バイオハザードV:リトリビューション ソニーピクチャーズ 2012/9/14 9,497
17 おおかみこどもの雨と雪 東宝 2012/7/21 9,468
18 ドラゴン・タトゥーの女 ソニーピクチャーズ 2012/2/10 9,370
19 ALWAYS 三丁目の夕日‘64 東宝 2012/1/21 8,769
20 ヘルタースケルター アスミック・エース 2012/7/14 8,749
21 ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル パラマウント 2011/12/16 8,679
22 映画 名探偵コナン 11人目のストライカー(※) 東宝 2012/4/14 8,387
23 映画 ひみつのアッコちゃん 松竹 2012/9/1 8,366
24 デンジャラス・ラン 東宝東和 2012/9/7 7,630
25 ボブ・マーリー/ルーツ・オブ・レジェンド 角川書店 2012/9/1 7,044
26 僕等がいた(シリーズページ) 東宝/アスミック・エース 2012/3/17 6,945
27 僕等がいた 後篇(※) 東宝/アスミック・エース 2012/4/21 6,945
28 新しい靴を買わなくちゃ 東映 2012/10/6 6,681
29 009 RE:CYBORG Production I.G /
ティ・ジョイ
2012/10/27 6,571
30 ロラックスおじさんの秘密の種 東宝東和 2012/10/6 6,196

※「映画ドラえもん のび太と奇跡の島~アニマル アドベンチャー~」は「ドラえもんチャンネル」の数。
「映画 名探偵コナン 11人目のストライカー」「SPEC~天~」「僕等がいた」は映画シリーズで同じfacebook pageである。
◆各配給会社の戦略にばらつき◆
これと2012年の興行収入ランキングを併せてみると、facebookでの「いいね!」数から見えてくることは、興行収入と連動はさておき、配給会社によってFacebookの比重が違うことでした。例えば、東宝は「悪の教典」など若者向け映画ではかなり重視していると考えられますし、様々な興行結果となった作品の多くが「いいね!」ランキング上位にあがっている東宝東和は全般的にfacebookを有効な媒体と見ていると考えられます。逆に、「ネットで話題になった」イメージのある作品でもfacebook pageのいいね数はランクインしていない作品もあります。ちなみに、各配給会社のfacebook pageのいいね数を集計すると、非常に積極的にいいね数を集めている配給会社もあれば、配給会社やブランドによってはfacebook pageすら設立していないところもあり、そのコントラストが明確で、各社の戦略の違いが際立っているといえます。
このコラムシリーズでは、facebook以外の媒体もランキングを見てきましたが、おおむね、「この規模の作品ならこのくらい」という定型化されたパターンがあるように思います。一方のソーシャルメディアは、媒体の数も多く変化も激しいことから、作品ごとに手探りをしていかざるを得ず、結果、作品や配給会社ごとにバラバラに見えるのかもしれません。
◆facebookのポテンシャル① 接触率や映画情報源としての比重は低いけれど、接触効果が高い◆
情報伝達媒体としてみたとき、映画情報源としてはメインとなっているテレビ・劇場予告編と比べるとソーシャルメディアは情報源としての力はまだまだ小さい(大まかにいうと、予告編・テレビ>映画情報サイト・作品HP・(リアルな)口コミ>新聞>SNS/ブログ>ラジオ・雑誌=交通・屋外広告という順序)です。しかし、まだ新しいメディアで伸び代が未知数であり、世代ごとの特色が際立っていたり、最近の調査結果では、媒体に接触したあとに映画を見るきっかけとなる度合いが比較的高めであったりと、おもしろいポテンシャルを秘めているといえます。
◆facebookのポテンシャル② 戦略作りのためのツール◆
また、宣伝実務においては、facebookを情報伝達媒体としてのみとらえて、そこでの露出量・反応、例えばいいねの絶対数を過去作品や競合と比べるというより、「作品内のマーケティングアンテナ」という使い方も有効かもしれません。例えば、同じ作品のfacebook page内で発信内容に対してどのような点に特に反応がいいのかなど、訴求点を磨き込んでいく上でのテストツールという使い方もあると思います。こういった作業が細かいサイクルで小規模でできることはメリットだと考えます。認知、意欲を接触時に上げる宣伝媒体というだけでなく、リサーチに近い、マーケティング戦略を立てる際のパイロットツール、作品ごとにリサーチモニターがいるようなイメージです。
◆facebookのポテンシャル③ 宣伝コストの「資産化」◆
さらには、facebookに限らずインターネット全体にいえることですが、テレビと違い、いったんつながりを持ったユーザーには個別に再度リーチが可能という特性があります。こうした、投下した宣伝コストがいわば資産化しやすい特徴を生かすという意味では、シリーズものはもちろん、興行とDVDマーケティングでも同じfacebook pageを使い続けるなどの戦略も有効そうです。
◆ ◆ ◆
来年以降も様々なソーシャルマーケティングでの成功例が生まれて来るはずで、そのなかから映画マーケティングの新しい形が作られていき、そこから次の展望を考える分析を試みたいと考えています。
(1)年間興行収入ランキング
(2)認知度などのマーケティング指標ランキング
(3)宣伝露出量(テレビ・劇場予告編)ランキング
(4)ネットでの話題度(ネットニュース・ブログ・検索数)
(5)facebookでのいいね!数ランキング

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