「東京家族」作品テーマの普遍性と現代性


毎日新聞の金曜日夕刊の映画欄に毎月末に「データで読解」というコーナーでコラムを書かせて頂いているのですが、1月は、1月19日に公開された、日本を代表する山田洋次監督の「おとうと」以来2年ぶりの新作「東京家族」についてとりあげました。タイトルは、『時代を映す「東京家族」への関心度』です。ここでは、字数制限で削った分を含めてアップさせて頂きます。

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「東京家族」は市場アンケートによれば観賞意欲層は5,60代がメイン。最近のもので同様の観客層でヒットしたものには高倉健主演の「あなたへ」(最終興収24億)がある。また、山田監督の前作「おとうと」(最終興収21億)も同様の構成。その「東京家族」だが、公開週末はびっくり大ヒットとなった「テッド」に押されて動員で2位となり、土日の興行収入でも「あなたへ」「おとうと」を下回った。

しかし以下の点から最終興収はこれらの作品を越えるヒットとなることを期待したい。
まず、男女比のバランス。先述のとおり、5、60代がいずれの作品もメインだが、「おとうと」が主演の吉永小百合の動員力もあって、60代男性の占める割合が高い。一方の「あなたへ」は女性5,60代。「東京家族」はその中間でバランス型。

また、有名原作の映画化である「おとうと」ほどではないが、認知は「あなたへ」よりも「東京家族」の方が高めであり、今後の広がりも期待できそう。

さらには、作品テーマの普遍性と「現代性」によって訴求力の広さと強さも挙げたい。
まず、広さということでは、「おとうと」が名前の通り姉弟の関係、「あなたへ」は夫婦だが、「東京家族」は家族の中で親を思う気持ち、子を思う気持ちが交錯する。誰もが親から生まれることからすると普遍性があり、強さという意味では、日本においてはいまこそこのテーマが多くの人の心をとらえるのではないか。

博報堂生活総合研究所が発表した「生活動力2013」によれば、高齢化が進むということは、裏を返せば人生における「子供としての自分」の時間が長くなり,人口が「総子化」するということ。高齢化の進行によって親が存命の「成人子供」の数は増加し続けており、未成年を加えた総「子供」の数は8,700万人にのぼるという。

社会を支える「大人」はみな親が存命の子供である。人類が未体験の社会構成となる日本において、より多くの人が、大人だけれど、自分の親の「子供」として親のこと、家族のあり方について悩んでいる。だからこそ、親と子、それぞれのあり方、思い、生き方を切り取ったこの映画はかつてなく多くの人の胸を打つ可能性があると考える。

観客の観賞後満足度も高い様子。口コミの広がりによって幅広い年代から多くの人が劇場に足を運び、ロングランヒットとなることを期待したい。

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