先週末ランキングでは多くのシリーズの続編が前作を上回るスタートを切る中、「ワイルド・スピード」シリーズの『ワイルド・スピード SKY MISSION』も土日2日間で前作比120%以上のスタート。
(C)2014 Universal Pictures
先日参加したVariety主催の映像業界のマーケティング関係者が集まるカンファレンスでも、本作のプロデューサーであるニール・H・モリッツ(Neal H. Moritz)氏が登壇し注目を集めた。カンファレンスは4月10日開催で、ちょうど米国や世界各地で大ヒットスタートを切った直後のタイミングであった。
今回の『ワイルド・スピード SKY MISSION』は7作目にあたり、モリッツ氏は1作目からの製作過程の紆余曲折、主要キャストのポール・ウォーカー(Paul William Walker IV)の死亡事故とその後の製作者の判断、今回のヒットに至る経緯などについて語っていた。
14年にわたるシリーズ製作期間での紆余曲折と7作目の主要キャストの死
本作は「大ヒットシリーズ」として定着しているが、順調に7作目までに至ったわけではないことについてニール氏は多くのことを語っていた。
シリーズ初期に直面した困難として、人気キャストのヴィン・ディーゼル(Vin Diesel)が出演しなかった3作目の「TOKYO DRIFT」がビデオストレートになりかけるといったシリーズの危機を迎えた。もう一度出演を依頼するためにユニバーサルの幹部がヴィン・ディーゼルの自宅を訪れた際、フェンスを乗り越えたところを番犬にかみ殺されそうになったというエピソードなどが披露され、会場を沸かしていた。
そこからシリーズは再び息を吹き返し大躍進が続くのだが、シリーズ製作上の最大の出来事ともいえるポール・ウォーカーの死については、撮影途中であったにもかかわらず製作がいったん白紙になった。モリッツ氏は製作者やキャスト・スタッフには様々な葛藤があったことともに、最終的にはポール・ウォーカーが映画を作ることを望むだろうとの思いで作品を完成させたとコメントをしていた。
7作目のマーケティング活動上では、公開前に「ポールがどのように描かれるのか」という点に大きな関心が寄せられていて情報のコントロールがチャレンジングだったとのこと。事前のモニター試写やSXSW会議でのプレミア上映会の鑑賞者においては、「エンディングをどうか人に言わないでほしい。これから見る多くのファンたちにあなたがいま味わった感動を味わせてほしい」というお願いをしていたが、実際、”ネタバレ”がオープンになることはなかったことに、感謝の意を表明していた。
Multi-cultural marketingと海外展開
セッションのモデレーターからまさに多様な人種バックグランドのキャスティングが功を奏しているのではないかという質問含めて、このカンファレンスのテーマの一つであったMulti-cultural marketingの成功例としての議論が多くなされた。
モリッツ氏は、特にヒスパニック系のコミュニティの関心は高まり、動員にポジティブという結果になったことは肯定したうえで、一方で、ある人種コミュニティを動員する目的だけでキャスティングをするとうまくいかず、作品のコンセプトに寄り添っていることが重要であるとの見方を示した。
また、「海外ではどうか」という質問に対しては、通常はこういったキャスティングは海外では受け入れられにくいが、「サブカル映画」からアクションや世界を旅するという各シリーズのスケールの拡大が海外でも訴求したことについて触れていた。それに加えて、車、アクション、キャスト、”girls”など、鑑賞者の鑑賞動機となる訴求力の多面性が本作の強みとの見方が示された。
カンファレンス時点では、この直後に大ヒットとなる中国での公開が控えていたが、その段階でモリッツ氏は「たぶん、史上最高のオープニングになるだろう」とコメントしていた。実際に中国興行市場最高のスタートとなっただけでなく、北米と同程度興行収入を稼ぎ出した。
日本でも前作を超える公開スタートとなったが、このカンファレンスが日本公開の一週間前だったこともあってか日本については言及がなかった。次回以降のコラムで各地域における本シリーズの躍進について考えたい。
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・VARIETY誌主催「THE ENTERTAINMENT MARKETING SUMMIT」レポート