ハリウッドマーケティングリーダーの本音(2)「ソーシャルメディアの存在感と影響力」

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(2015年4月ロサンゼルスにて開催されたVariety誌主催のカンファレンスメインイベントの一つ、”The Masters”というセッションレポートの続きです。)
前回コラムで取り上げた、映画マーケティングの大変さにかかわるコメント(映画マーケティングは結局公開までの最後の48時間にかかっていて、ソーシャルメディアの反応から、結果は期待以上になるのか、そうじゃないのかわかるこの瞬間に向けて、すべてのことをやり遂げておかねばならない)を受けて話題は「ソーシャルメディア」へ移った。
Variety誌主催カンファレンス

「ソーシャルメディア」の存在感

まずモデレーターのEller氏から、映画プロモーションにおいてソーシャルメディアがどの程度の割合を占めるのか、完全に中心的な存在になっているのではないかという質問が投げかけられた。
これに対してRelativityのコルティン氏は、「ソーシャルメディアの存在感は映画だけでなくすべての産業において増している」としたうえで、「ソーシャルメディアなしで映画プロモーションはできないが、一方で、ソーシャルメディアで一喜一憂すべきでもない」とした。映画マーケティングの仕事を難しくしているのは「ソーシャルメディアそのものよりも、メディアが多様化するなか、ターゲットとする観客にリーチできるものを特定することが困難であること」と述べた。

批評も「ソーシャルメディア」?

モデレーターの「ソーシャルメディアの影響力として、映画興行を後押しすることもあれば、まだ公開前の段階で興行に大打撃を与えることもある」というコメントに対し、コルティン氏は「批評もその点では全く同じ」とコメントを挟んだ。「批評は”ソーシャルメディアの一形態”という見方もできる。批評は“メディア”ではないが、ソーシャルにおいても、批評においても、そこにどのように書かれるかということが懸案であるという点では全く同じ」であるとコメントした。

ソーシャルメディアの活用例

本カンファレンス開催時に大ヒット中だった『ワイルド・スピード SKY MISSION』についてはソーシャルメディアの活用例としても具体的に挙げられていた。
『ワイルド・スピード SKY MISSION』は公開日からかなり前の段階でメディア露出をし、いったん止めたがその後も映画についてソーシャルメディア上で人々が話題に取り上げた。このおかげで、再度メディア露出を開始した段階では、市場内での浸透度はさらに深く広くなっていて、公開に向けて勢いが増したことが紹介された。
さらには、ソーシャルメディアで語られていることを注意深く分析することの重要性も指摘された。
ソーシャルメディアの存在によって、市場内に様々な意見を持つグループが幾重もの層になっていることがわかり、また、ある意見が出されると、必ず「そういう風に言う人もいるけど、実はこういう側面もある」と語る人が出てくるものであり、施策によってそういった意見を引き出すことが重要とされた。
たとえば『ワールド・ウォーZ』は当初はソーシャルメディアで酷評されていた。その状況を覆して興行を成功に導いたパラマウント・ピクチャーズのクーリガン氏は「ネガティブなコメントがあったとき、どのような人がそれを言っているのか、その人々の意見がどの程度一般化されうるのか、目を背けることなく「会話」に耳を傾けるべき」とした。
ソーシャルメディア上の『ワールド・ウォーZ』の批判が出たとき、やり取りを分析していく中で、批判をしていたのはごく一部のトレンドセッターの人々で、それほど一般的な意見とはなっていないことがわかったので、意見が広く浸透する前にそれを覆す施策を打って行ったエピソード共有された。施策の中ではテレビスポットCMが観客の心をつかんだことが有効だったとのことである。
クーリガン氏は、このようにその映画についていま、人々が具体的にどのようなことを語っているのかが分かることが強力な武器になっているとしてコメントを締めくくった。

ハリウッドマーケティングリーダーの本音

(1)「素晴らしい映画マーケティングの条件とは」
(2)「ソーシャルメディアの存在感と影響力」
(3)「小規模公開映画の宣伝手法」
(4)「映画タイトルの重要性と成功事例」
(5)「伝統的なトラッキングデータ VS ソーシャルメディアデータ」
(6)「若者を映画館にどう動員するか~市場の変化に対応する(1/2)~」
(7)「「満たされていない観客層」としての中高年~市場の変化に対応する(2/2)~」
(8)「今こそ映画マーケティングが面白い」

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