大ヒット「そして父になる」にみる宣伝のうねり

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(執筆:梅津文)

 9月28日に公開された是枝裕和監督・福山雅治主演の「そして父になる」は公開週末土日二日間で興行収入3億を超え、先行分含めて5.6億の大ヒットスタートを切った。シリーズもの、人気原作ものなど認知ベースがある作品が興行収入ランキング上位を占める中で、本作の数値の推移をみると宣伝開始前の時点ではベースとなる認知・浸透層がないながら目覚ましい認知・意欲レベルに到達し、宣伝・興行として大成功のケースといえる。
 認知ベースがなくても強いブランド力(ジブリなど)あるいはキャストの人気が高くたくさんのテレビ番組等でとりあげられれば認知は上がるもの。今回も、俳優の人気はもちろんある。しかしそれ以上に、5月末の映画祭受賞からの様々な宣伝展開のうねりがうまく重なり合い相乗効果が出た結果が数字の推移からもうかがえる。
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 まず今年のカンヌで審査員特別賞を受賞したニュースが各メディアで大量に報道され、受賞直後(17週前)の認知率は55%を記録した。原作のないオリジナル作品は通常12週前時点で10%に満たない例が多いことを考えると異例なほどに高い認知度を獲得した。
 その後各種報道が一段落し、認知度が徐々に下がっていった。しかし、その間に本作と同じく福山雅治主演(また同じくフジテレビ・アミューズが出資者に含まれる)「真夏の方程式」が6月30日に公開され夏にかけて興行収入30億以上を稼いだことはその後の認知の下支えとなり、下げ止まりに貢献したであろう。17週前の映画祭受賞直後から14週前までは徐々に認知度が下がってきたが、「真夏の方程式」公開日前後(13週前、12週前)では数値が再び上昇した。その後は再び下がったものの公開10週前から6週前時点まで5週間にわたり認知率43%で推移した。
 5週前から公開に向けた時期では大量のテレビ番組内露出などで再び大きく盛り返し、公開時にはカンヌ直後の数字を超える認知率67%となった。ちなみに、興行収入110億を超えた「風立ちぬ」の公開時の認知率も67%であった。公開時の意欲率も非常に高く、「真夏の方程式」の公開時の意欲率とほぼ同じ、2013年公開の邦画の中では、「風立ちぬ」「真夏の方程式」に続く数値である(アンケート対象は全国に住む15歳から69歳男女)。
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 このように国際映画祭での受賞を着火点にその後も話題性の火を絶やさず公開時に大きく再燃させていくきれいな流れが数値からもうかがえる。興行結果はもちろん、これらマーケティング指標からも今年の映画マーケティングの紛れもないホットトピックの一つといえる。
「そして父になる」2013年9月28日 公開(C)2013『そして父になる』製作委員会

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