年末・お正月興行が本格化する中、ここでは、今週末最も大きなスクリーン数で公開される見込みの『ゼロ・グラビティ』をとりあげる。
◆SF大作として考えると◆
過去の大規模公開SF映画と本作を比べると、公開一週前の先週末(12月7日土曜日)時点の意欲度、認知度の数値は2.7~2.9億ペース。先週末含む過去4週間の意欲度、認知度の数値は、3.1~3.4億ペースで推移している。
本作と公開一週前時点の数値が近い作品としては、2010年年末の同時期に公開された『トロン:レガシー』(公開週末土日2.9億、最終興行収入21.2億)がある。
◆「未知なる映像体験」という魅力◆
『ゼロ・グラビティ』には、映画館で宇宙遊泳を疑似体験できそうな期待が醸成されており、「SF」というよりも、むしろ“これまでにない映像”ということが訴求点であろう。
本作を“未知なる映像体験”という観点で過去作品と比較すると、先週末の数値は、今年公開された『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』の同時期の数値とも近い。『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』は公開週末土日3.3億、最終興行収入は1月末のお正月興行も終わったころに公開されていながら19.1億まで伸びた。
◆『アバター』と比べると?◆
近年公開した映画の中で“これまでにない映像”をもたらしたものといえば、なんといっても『アバター』。『アバター』は、世界中の人々の映画に対する基準を変えるほどのインパクトをもたらした。
ただ、こちらは公開一週前で『ゼロ・グラビティ』よりもだいぶ意欲度も認知度も高めであった。
◆「これまで見たことのない物凄い映像」は公開後が勝負◆
『ゼロ・グラビティ』に関して、『アバター』同様に期待がかかるのは、公開後の話題度の高まり。
通常、市場内の「意欲度」は、公開時をピークに徐々に下がっていく。事前に意欲があった人は、映画が公開されれば映画を見てしまうからである。口コミの広がりが公開前よりも市場内意欲度を押し上げるケースは少ない。
しかし『アバター』は公開後に「物凄いものを見た!」という“目撃情報”が広がり、市場内の意欲度の数値もむしろ公開後、加速度的に高まっていった。結果、公開週末土日は6.0億スタートだが、最終興行収入は156億まで広がった。
人に見たことのないものを欲しがらせることは難しい。映画が「中身を見せずに期待感や空気で時間、体験を売る」ものだとすれば、それは共通の課題である。しかし、これまでにない本当に斬新なものであれば、まず市場で多くの人が体験・目撃してからが、よりいっそう勝負となりそう。
本作も公開後、非常に強い「引力」を市場へともたらすことに期待がかかる。
〇関連映画一覧〇
『ゼロ・グラビティ』
『トロン:レガシー』
『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』
『アバター』
『ゼロ・グラビティ』 (C) 2013 WARNER BROS.ENTERTAINMENT INC.