(毎日新聞夕刊映画欄「データで読解」にて2014年1月31日付で掲載された記事の転載です)
アニメ『THE IDOLM@STER MOVIE 輝きの向こう側へ!』は、アイドル育成ゲームをテレビアニメ化した『アイドルマスター』の劇場版である。
この作品をご存じなかった方も多いかもしれない。実際、昨年12月以降に週末成績でトップ10入りした作品の中で、最も認知度が低い。『永遠の0』の公開時の認知度67%に対し、”IDOLM@STER”は14%である。それでも、コアなフアンが劇場に詰めかけた。公開6週目まで、来場者に対して週替わり特典が計画されており、腰の強い興行が見込まれる。
こうしたコアフアンを動員するアニメは、劇場でのグッズやパンフレットの購買率が高い。昨年のアンケートで、劇場鑑貢時にパンフレットを購入したと答えた人の割合は平均12%だが、同種のアニメでは多くが30~40%を記録した。『アイドルマスター』ファンにとって、映画館に行ったことは大好きなコンテンツに存分に関われた特別な体験であっただろう。映画にはそんな側面があるが、特にアニメはその「深度」が高い。
「狭く深く」刺さる映画宣伝・興行は、従来の大量露出による話題作りや動員とは対照的だ。しかしこういったアニメから、ヒットの目安となる興行収入10億円を超えるものが増えている中、新たな手法として確立されつつある感がある。
(GEM Partners代表、梅津文)=毎月最終金曜日掲載
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