洋画の認知率と興行収入の関係に変化

Pocket

テッド (C) 2012 UNIVERSAL STUDIOS.All Rights Reserved. / Tippett Studio

映画の宣伝に携わる方とお話ししていると、「認知が上がった」。あるいは「認知が上がらなくなってきた…」という話題になることが多い。「とにかくたくさんの方に映画館に足を運んでもらいたい。そのために大事な指標が認知度である」という前提理解に基づくものである。

当然ながら、そもそも知らないものは欲しがれないので、認知度は大事である。しかし結局、認知は意欲を上げるための手段でしかない。その手段としての認知率の傾向に変化はないのか。いま、たくさんの方に劇場に来ていただくうえで大事なことは何か。

まずはハリウッドメジャー配給会社による洋画について整理した。

メジャー洋画は2010年と比べて2013年は平均認知度が13ポイント下がっている

下記の図は、各年に公開されたメジャー洋画作品ごとに公開週の認知率の数値を整理したものである。

左側の表は、各年の公開週認知率の平均、最大値、最小値の値、右側の図は、公開週の認知率のレンジごとの本数を各年ごとに整理したもの。

こうしてみると、年々メジャー洋画の認知度は下がっていることがわかる。平均では2010年は49%だったのに対して2013年は12ポイント下がって37%である。最大値は毎年80%以上の作品が1本以上はあったものの、2013年は一気に下がって最高認知率は64%である。

認知度70%や80%台レベルというのは、「ほぼ誰でもその映画のタイトルを知っている状態」であろう。2012年以降そのレベルの映画は、年々減ってきている。また、メジャーが配給する100スクリーン以上の作品であれば、2010年は「どんなに認知度が低くても20%」だったのが、2013年には10%前半の作品も散見されるようになった。

認知が低くとも高稼働の作品が増えてきている

認知が年々下がって来ている中、一作品当たりの公開週末土日興行収入の平均値は必ずしも下がっていない。また、特筆すべきは「かつてと比べると認知は低めだが、興行収入はしっかり稼いだ」という作品(特に2013年)が増えてきていることである。

下記の図は、横軸に公開週の認知率を、縦軸に公開週末土日の興行収入を取り、個々の作品をプロットし、年ごとに色分けしたものである。2010年は赤、2011年は青、2012年は黄、2013年は緑である。

注目していただきたいのは、丸で囲ったゾーン。このあたりは相対的には認知率の割に興行収入が高かったものである。このゾーンの作品はみな緑、つまり、2013年公開映画である。過去と比べて「認知の割にたくさん動員できた」作品事例である。

より注目されるべき「意欲度」

一方で、「どのぐらいの意欲度か」と興行収入結果を見てみると、認知度ほどは経年で変化はない。

高いことが安心材料の一つである認知度は、年々下がってきている。あるいは、上がりにくくなっている。しかし認知は低くともたくさん稼ぐ作品も増えている。その実情がどのようなものか。そして本当に注目すべきは、そもそも認知を上げる目的であるところの、「結局何人が見たいと言ってるのか?」という「意欲度」であるといえる。

◆ ◆ ◆

ワールド・ウォーZ (C) 2012 PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.

使用データ:GEM Partners株式会社によるCATSレポートデータ
分析対象:以下の条件に該当する191作品
ハリウッドメジャー配給会社:ソニー・ピクチャーズ、ディズニー、パラマウント、ユニバーサル/東宝東和、ワーナー、20世紀フォックス
その他絞り込み条件:100スクリーン以上規模で公開

関連記事