(※2014年5月30日付毎日新聞夕刊映画欄において掲載されたものです)
映画業界に「テントポール作品」という言葉がある。テントを支える一番高い桂に見立てて、1年間の配給会社のラインナップのうち、最も大きくヒットして全体を支える作品を指す。
『アナと雪の女王』は興行収入200億円を突破し、間もなく2001年公開の『ハリー・ポッターと賢者の石』を超え、歴代興行収入3位となる見込み。こうなると、配給のディズニーのみならず、興行全体のテントポール作品といえ、与える影響もまた大きい。
まず、映画鑑賞者人口全体の広がり。「アナ雪」の累計動員数は1600万人。これだけのヒットは、少なくとも数百万人程度の、「映画館に来るのは1年ぶり以上」という観客を動員したと見られる。
さらには、夏までの興行の押し上げ効果。例年5月の連休後から、かきいれ時の夏休みまでは興行が落ち込む時期である。しかし「アナ雪」に押しかけた観客が5~6月公開作品や夏公開の注目作の予告編を大音響・大画面で目にすることにより、次はこれを見ようというきっかけになる。
映画鑑革はきっかけがあって劇場に見に行き、予告編などを見てまた次の鑑賞につながる、「数珠つなぎ」の消費行動である。「アナ雪」のヒットは一過性に終わらず、映画興行を盛り上げる起爆剤となりそうだ。
(GEM Partners代表、梅津文)=毎月最終金曜日掲載
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◆掲載元◆
毎日新聞: シネマの週末・データで読解 「波及効果大きい「アナ雪」」 (毎日新聞2014年5月30日 東京夕刊)