2012年12月16日に立教大学の「メディア各論4(映画)」(講師:WOWOW高見澤尚樹氏)が担当するオムニバス講義に、アスミック・エース株式会社豊島雅郎氏とともに登壇しました。
内容は、映画興行の現状を踏まえた上で、2012年のアスミックエース作品のなかで特にヒットした作品について、公開までの道のりにつき豊島さんの方から”実際に企画・宣伝で起こったこと”をお話し頂き、私の方からマーケティングデータを示しつつそれがどう数字に表れているのかを説明しました。
とりあげたのは以下の3作品です。
■「僕等がいた 前篇・後篇」:(配給:東宝/アスミック・エース、監督:三木孝浩、主なキャスト:生田斗真・吉高由里子、2012年3月17日・4月21日公開、最終興行収入25.2億・17.2億)
> 10代20代女性において、原作とキャストの人気がマッチ(本ページ)
■「ヘルタースケルター」(配給:アスミック・エース、監督:蜷川実花、主なキャスト:沢尻エリカ、最終興行収入21.5億)
> ハンデが逆に功を奏した
■「のぼうの城」(配給:東宝/アスミック・エース、監督:犬童一心・樋口真嗣、主なキャスト:野村萬斎、最終興行収入28.4億)
企画・宣伝・訴求層とも想定外の結果がヒットに繋がる
(※「のぼうの城」は来週以降の更新を予定しております)
ここではまず、「僕等がいた」につき掲載します。
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【梅津】
横軸は『公開何週前か』、縦軸はそれぞれ『TV露出量』『意欲率』『認知率』を示しています。認知率というのは「その映画作品がどれだけ知られているか」という指標です。意欲率というのは「どれだけその映画作品を観に行きたいか」という指標です。
TV番組露出が多い(紺色の棒グラフが大きい)週に関しては、番組露出内容を吹き出しで記載しています。
公開12週前にすでに認知度17%、オリジナル作品はこの時期通常10%前後であるので、これは高め。公開1週前まではじわじわ少しずつ番組内での紹介があって数字があがり、公開日までの一週間に一気にテレビ番組での露出があって認知、意欲があがっているのがおわかり頂けると思います。
【豊島氏】
「僕等がいた」は2002年からコミックで連載をして、累計1000万部近く売れている作品です。女性の方で、中学生・高校生の時に読んだという方も多いと思います。
映画化することになったのは、原作に人気があったからです。先ほど認知が重要という話がありましたが、「僕等がいた」は10代、20代の方を中心に、既に作品を知っている人が多いということを前提として、映画化することになりました。企画プロデュースをしたのは「大奥」などを手掛けた実績があり原作の映画化権を押さえた荒木美也子さんと、「世界の中心で、愛をさけぶ」などを手掛けた春名慶さん、それに「岳 ガク」などを手掛けた臼井央さんの3名です。
元々認知度が高く人気がある原作を映画化する、ということは一つのパターンとなっています。TVキー局のドラマを映画化することも、パターンの一つです。小説などの活字原作、漫画原作、ドラマ原作は人気がある場合基礎となる認知度が高く、映画化されるのがパターン化されています。
主演の生田斗真さんと吉高由里子さんが、TVに多く出ていました。図をみると、二人がテレビに出演した結果が公開直前の一週間の伸びにあらわれております。
「僕等がいた 後篇」
【豊島氏】
実は、前篇公開から5週間後に後篇を公開すると言うのが、今回の企画のキモでした。前篇はお陰様で興収25.2億円までいきましたが、後篇は最終興収17.2億に留まりました。
前篇公開時には主演二人の頑張りもありTVをはじめメディア露出は凄いものがありましたが、その反動もあり、後篇公開時の認知・意欲アップのための露出がやや劣ったことなど、前篇・後篇連続公開という初めての試みを経験しなければ得られない貴重な反省材料も残りました。
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▼続きはこちら▼
『ヘルタースケルター』ヒットまでの道のり~アスミック・エース豊島雅郎氏の講義録から
『のぼうの城』ヒットまでの道のり~アスミック・エース豊島雅郎氏の講義録から】
(※「のぼうの城」は来週以降の更新を予定しております)
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